Ren Structural Engineers Co.,Ltd.
静岡理工科大学 土木工学科棟
・竣工年 2022年
・設計・監理 栗生明+北川・上田総合計画 株式会社 小石川建築ノ小石川土木
・構造設計 レン構造設計事務所(二連木清 大沼健一)
・場所 静岡県袋井市
・構造 RC造+S造+プレストスト構造
・受賞、掲載記事 第55回 中部建築賞
2023 グッドデザイン賞
新建築 2023年1月号掲載
◯建築概要
静岡県で初めて創設される土木分野専門の学科の校舎である。
1階は多目的室、2階は教室、3・4階は開放的なワンルームに研究スペースを設けている。
構造形式は地上4階建ての耐力壁付き鉄筋コンクリート構造(一部鉄骨造)であり、屋根はプレストレストコンクリート造(ポストテンション方式)を採用しハイブリッド構造としている。
土木工学科という分野に対して、土木的なスケールやボリュームを感じさせるような、軸力・水平力を負担する3つのコア壁、また開放的な空間を構成するため大屋根のワッフルスラブとしている。
無柱空間としたワッフルスラブ形式のプレストレストコンクリート造の屋根(33.5x32.0m)は、2700ピッチの小梁で構成し、一部トップライトを設け、非常に開放感のある居心地のよい研究スペースとなっている。
デザイン的には隣り合う建築学科棟が建築的な繊細な<線>のイメージに対して、土木工学科棟はボリューム感のある<面>で構成したシンボリックで重量感のある建物となっている。
◯構造計画
プロポーザルの構造計画は、「土木的スケールの表現」+「学生が、構造を生きた教材にできる」である。
上記の構造計画に対して、鉄筋コンクリート造とし3カ所のコアとそれらを繋ぐワッフルスラブ形式の梁で構成する計画とした。
基本設計では、当初2~R階全てワッフルスラブの全層RCの計画であったが、多目的室・教室に対する合理的な構造計画及び施工性・経済性・工期などを考慮すると、2~4階の内部構造は鉄骨造でロングスパンで対応する方が、全層RCよりも意匠・構造・設備共に建物全体として整合がとれる計画になると判断し、鉄筋コンクリート造+鉄骨造のハイブリット構造とした。
土木的要素としてプレキャスト化も検討したが、ワッフルスラブの形状が複雑であり工業製品化するには非効率であり、本建物には適していないと判断し不採用とした。 静岡理工科大学の建築学科の先生、土木工学科の新設される新任の先生方のご意見も参考にさせて頂きながら、基本構造計画をまとめた。
実施設計では建物全体の性状、3つのコア壁による偏心・ねじれによる挙動、床面に生じるせん断力に対して注意して設計し、コア壁の配置・コア壁の厚さを決定した。
保有水平耐力計算はDs=0.55に対して地域係数Z=1.2、用途係数I=1.25で、ベースシアー係数は0.825の強度型の設計としている。
追加検討として時刻歴応答解析を行い、各節点の変位差が小さいことを確認し、コア壁の配置・壁厚の調整が問題ないことを確認した。
最大応答値は0.825以下、最大層間変形角は1/250程度となり、建物が保有する耐力は十分確保できていることを合わせて確認した。
◯施工計画
軸力・水平力を負担する3つのコア壁の厚さは最大で1100mmであり、コンクリート打設後の熱割れに注意が必要であることからマスコンクリート扱いとして施工計画をした。
コンクリートの配合計画は、コンクリートの温度解析によるクラック抑制検討を行い、中庸熱セメントを採用し打設直後からの養生を入念に行い対応している。
屋根形状は規模も大きく複雑な形状であることから、屋根の外周部から両引きで緊張することで明快な施工計画としている。
緊張工事はX・Y方向に交差したPC鋼線をどの様に緊張していくか等、複雑化する施工手順と品質確保のため、施工業者・専門業を交えて詳細な検討を行い対応した。
1~4階の建物内部は鉄骨造としていたため、最上階のワッフルスラブの施工時の重量に耐えられるように、施工時の支保工・仮設鉄骨についても施工精度に注意しながら施工計画を行う必要があった。
施工業者の詳細検討により、コンクリート打設・PC緊張後における高さ方向の施工誤差は全て10mm以下となる施工精度の高い施工が実現できた。
株式会社ピーエス三菱 技報(第21号)
ワッフル形状のPC格子梁の設計・施工 ー静岡理工科大学土木工学科棟ー